研修医になってやっと初めての学会発表のチャンスをもらうことができた!
賞目指してがんばるぞ!
とはいえ、何から取り掛かったらいいんだろう。。。
みなさんこんにちは。日々機械学習を学ぶ外科医のさとう(Twitterはこちら)です。
本記事は初期研修医の皆様、そして医学生の皆様に向けて書いています。
長くつらい初期研修、少し慣れてくると臨床以外の仕事をいただけることがありますよね。
その代表的なものが「学会発表」です。
今では初期研修期間の内に必ず1回は学会発表をさせる、なんて病院も多いです。
今回は、初期研修1年目の9月、初めての学会で研修医賞をいただくことができた私、さとうが様々な上級医の先生や先輩に教えていただいた学会発表準備の進め方、そしてスライド作成のTipsをご紹介します。
本記事の内容
- 具体的な学会発表準備の進め方
- スライド作成のコツ
- おすすめ書籍
少し自己紹介をさせてください。
私は現在外科の後期研修医をしながら独学でプログラミングや機械学習を学んでいます。
私は初期研修1年目の9月、縁あって外科系の学会の研修医セッションで発表させていただけることになりました。
医学生の時、基礎系のポスター発表などはしたことがありましたが、症例発表は初めてで病院にも来たばかりで何もわからず上級医の先生方や研修医の先輩にたくさん教えていただきながら、なんとか学会発表を終えることができました。
結果、運良く研修医賞をいただくことができました。
賞をいただけたのは、私がすごいのではなく、上級医の先生方や研修医の先輩がテクニックを包み隠さず教えてくださったからです。
今回は、この記事を読んだ方の少しでも力になれるように、困り果てていたあの時の自分に向けて、先輩から教えてもらったこと、今の自分からアドバイスできることをメッセージとして、今の医学生・研修医の皆様にこの記事に残したいと思います。
さっそく内容を見てまいりましょう。
目次
研修医のための初めての学会発表準備の進め方
医者であれば避けて通れることができない学会発表。
先輩方は簡単そうにやっているように見えますが誰もが最初はやったことがなく初心者でした。
学会発表やスライド作りにはある程度コツのようなものがあります。これらを抑えることでより早くより良い発表をすることができます。
具体的な学会発表準備の進め方
実際に上級医の先生に学会発表の機会をいただけた時、どうしたらいいでしょうか。
とにかくまずスライドを作る。
これはNGです。
学会発表の準備の手順を最初から最後までこと細かくここで説明してしまうととても長い記事になってしまいます。
なので今回は特に時間を無駄にしていまいがちな大事なところを4つに絞ってご紹介します。
さっそく結論から。学会発表準備で気をつけるべき4つのポイントはこちらです。
学会発表準備で特に気をつけること
- まず必要な書類提出をする。
- 似た発表をたくさん集める。
- ひたすらインプットする。
- 考察は必ず3割報告する。
1. まず必要な書類提出をする
まずは何よりも先に検査画像、病理画像、超音波画像などの申請書類を提出しましょう。
学会発表にこれらの画像を載せることは必須です。
これらは施設によっては申請から自分の手元に届くまで1週間以上かかることもあります。スライドの提出期限ギリギリになりやっぱり画像が必要、でも画像が届くまで1週間以上かかり間に合わない。こんなことはよくあります。
大事なことは、使う可能性のある画像やデータは全て申請しておくことです。データの申請を第一にするというのは基本中の基本なのでまず抑えておきましょう。
2. 似た発表をたくさん集める
データの申請が終わったら次に何をするか。
先輩や同期に頭を下げてお願いをして、似た発表をたくさん集めましょう。
大腸がんの症例発表なら、大腸がんの症例の発表経験がある人にお願いしてみましょう。肺がんのケースシリーズなら、癌症例のケースシリーズの発表経験がある人にお願いしてみましょう。
それはなぜか。
似た発表を集め、先輩方や同期の素晴らしい発表を真似することでスライド作成の時間を大幅に削減する事ができるからです。
良いスライド作成のポイントとして、
- 1スライドの文字を多くしすぎない(必ず文字は24ポイント以上、行間は1.5ポイント以上)
- 画像を細かく貼りすぎない。
- 無駄な検査所見を記載しない。
- ・・・
非常に多くのTipsやお作法が存在します。
また学会発表の流れは大まかな型があります。
症例発表なら、現病歴などのイントロダクション→患者プロフィール→検査所見→画像→治療方針→治療→治療経過→考察。
これを一から勉強して自分で一から全てのスライドを自作するのは非常に時間がかかり効率が悪いです。
イントロダクション、考察という個性を出すスライド以外は基本的に真似をしてしまいましょう。
そして真似をして削減した時間で自分の個性を出すポイントである考察に時間をかけましょう。
自分の労力をどこに注ぐか、これを間違えないようにしましょう。
3. ひたすらインプットする
似た発表をいくつかいただくことができた。いざスライドを作っていきます。
患者プロフィールや検査所見などルーチンのスライドを作成しながらやるべきことがあります。
それはひたすらインプットをすることです。
などを使って症例発表であれば同様の報告や類縁のことをひたすら調べましょう。
それはなぜか。
ひたすら調べて知識をつけて初めて、自分の発表症例の強みがわかってくるからです。
自分の発表症例のどこが報告すべきポイントなのか、どのくらい稀であるのか、過去の報告とどこが違うのか。
これらは自分で調べてインプットをしなければ決してわかりません。
良い発表をするためにはまず自分の発表症例について良く知ることです。
4. 必ず考察の3割報告をする
ここが4つのポイントの中で最も重要です。
似たスライドを集め、大まかな流れのスライドを作った。
たくさん調べて自分の発表症例の強みや稀なところがわかってきた。
そしたらいざ最も重要である考察の作成に移ります。
みなさんはどの時点で指導医の先生に見ていただくのがいいと思いますか。聞きすぎても指導医の先生は忙しいから邪魔になってしまいますし、何も聞かずに作成を進めるのも問題があります。
必ず、考察の論旨(大まかな内容と方向性)を作成した時点で指導医の先生に一度見てもらいましょう。
それはなぜか。
考察を自分で考え、自分で凝ったスライドを作り上げる。自信満々で指導医の先生に見ていただいたところ、指導医の先生のビジョンと全く違った。そして何十時間もかけて作ったスライドを一から作り直し。
こんなことはザラにあります。
本当にショックですしせっかくかけた時間が無駄になってしまいます。
これを防ぐために、考察は論旨を作成した時点でスライドづくりに取り掛かる前に必ず一度指導医の先生に共有しましょう。
論旨を指導いただきながら磨き上げた上でようやく考察のスライド作成に取り掛かりましょう。
スライド作成のコツ
スライド作成のコツは巷で無数に語られています。
今回は私が先輩方から教えていただいたもの、中でも自分の中で今でも特に大事にしている2つのコツをご紹介します。
スライド作成の2つのコツ
- 調べた内容を盛り込みすぎない
- スライドはビジュアルサポートに徹する
とにかくスライドはSimple is the bestです。
調べた内容を盛り込みすぎない
これは本当にやってしまいがちです。
先程申し上げたようにひたすらインプットをするとたくさんの発見や驚きがあります。
自分が勉強したことを全て人に教えたくなってしまいます。
絶対にやめましょう。
自分が調べて発表することはぐっと堪えて3つまでにしましょう。
情報が1つの発表に載りすぎてしまうと観客は何が重要なのか、どこに注目すればいいのか、何が発表症例の強みなのかわからなくなってしまいます。
人は1つの発表で記憶に残すことができるのは3つまでと言われています。
自分の知識をたくさんみんなに知ってもらいたいのはわかります。しかし、良い発表をするためにぐっと堪えて3つまでにしましょう。
スライドはビジュアルサポートに徹する
スライドは可能な限り、図やイラストを用いて目で見て直感的に内容がわかるようにしましょう。
よくあるのが、調べたことを文字に起こしてすごく文字だらけのスライドを作ってしまうことです。これは絶対にやめましょう。
それはなぜか。
人は文字を読みながら同時に話を聞き、理解することが難しいからです。
例えば、術後QOLの記述をするとします。
ある報告では、患者さんの術後QOLは80%が非常に良い、17.5%が良い、2.5%がまあまあであったと報告されています。
これを図で示してみます。
いかがでしたでしょうか。文字の時よりもより直感的に把握することができます。
このようにスライドは可能な限り図やイラストを用いて視覚に訴えるものとし、詳細の内容は口頭で説明するように心がけましょう。
おすすめ書籍
私は今日ご紹介したようなテクニックは先輩から教えていただいたものもありますが、プレゼンテーションに関する本で学んだことも非常に多いです。
以下に紹介する本に出会うまではプレゼンテーションを勉強する、という発想がありませんでした。
しかし、読んで見ると本当に役立つ内容になっており、「もっと早く読んでおけばよかった」と心から思いました。
私が今まで読んだ中でもこれだけは絶対に抑えておいた方が良い、と思うおすすめの書籍を3つだけ最後にご紹介します。
本書は特にスライドのデザインについて参考になる知識が多くの実際のスライドを例に出しながら解説されています。
筆者のガー・レイノルズさんさんが日本の幕の内弁当を食べた際、「プレゼンテーションも幕の内弁当のように美しくあるべきだ」と感じ本書を作成したと書かれています。日本とは非常に馴染みのある1冊です。
1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術
あのソフトバンクの孫さんも認めたプレゼンの達人、伊藤洋一さんの1冊です。
本書に書かれるプレゼンの三段ピラミッドを作る、という考え方はいまでも常に意識しています。
こちらは学会発表はもちろん、日々のプレゼン技術向上に役立つ1冊です。
こちらの記事で本書について詳しく紹介しているのでよかったら御覧ください。
本書は事実をどう伝えるか、というところにフォーカスしてプレゼンテーション、ないしはコミュケーションのテクニックが記されています。
気になる女の子をデートに誘う時のうまい誘い文句、などとてもキャッチーで楽しめる内容になっているので読書が苦手な方にもおすすめの1冊です。
さいごに
みなさんいかがでしたでしょうか。
今回は研修医になりたての未熟だった自分に伝えたい内容をこれでもかと詰め込みました。
本記事が1人でも多くの方の助けになり、そして皆様が学会でいい結果が得られることを切に願っています。
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では、また!
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